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2020年 05月 23日 ( 1 )
2019年レジデントアーティストからのメッセージ - COVID-19の影響について -
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、現在世界中の美術館やギャラリーが休館しています。
(アーカススタジオは6/1まで休館。)

2019年にアーカスに滞在したアーティストたちも、今までとは全く異なる日常生活を強いられています。
それぞれの拠点でどのように過ごしているのか、ベルギー在住のクリストファー・ボーリガードと、東京在住の渡邊拓也に現在考えていることを聞いてみました。(5月初旬)


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クリストファー・ボーリガード | Christopher Beauregard
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食料品店に入店する列へ並ぶクリストファー


「どのように破産したのか?」と問われたアーネスト・ヘミングウェイの小説*のキャラクターは、こう答える。「2段階ある。徐々に、そして突然に。」厳格なロックダウンが続くなか、私は「これは一体いつ始まったのか?」と問わずにはいられない。今となっては、以前の状態を思い出すのも、先の未来について考えるのも難しい。COVID-19は、初めは、遠くで起こっている巨大な出来事の、途切れ途切れに聞こえてくる噂にすぎなかった。ヨーロッパでも感染が報告されるようになった時も、まだ多くの人は、よくある季節性インフルエンザのようなものだと思っていた。

1月下旬のいつだったか、パブで友人とパンデミックの可能性について話していたとき、彼は私にサイエンス・フィクションの読みすぎだと言いった。「それに、ヨーロッパは世界でも有数の医療制度を誇っているし、僕たちが恐れる必要がどこにあるというんだ?」イタリア全土でロックダウンが始まり、ほかのヨーロッパの国々でも国境の閉鎖と経済活動の封鎖が始まったとき、生活は一夜にして一変したのだ。

文化産業で働く私たちには厳しい状況が続いている。私たちの仕事の性質上、(短期契約での雇用やフリーランスが多い)ベルギー政府からはほとんど何の経済的支援も与えられていない。全てはオンラインに後退してしまった。アートのコミュニティは、オンラインに避難し、インターネットは困難に対して共通の声と、変化のためのネットワークを形成する「場」になっている。他の国々では家賃のストライキや、アーティストへの助成を求める声が上がるいっぽう、ベルギーはほとんど沈黙している。

私たちが峠を越しはじめているかもしれないという兆しはあり、ベルギーでは移動と経済活動の制限が近く解除されると言われている。それによって、生活は徐々に元のように戻るのではないかという希望はある。たぶんいつの日か近いうちに、スタジオへと歩きながら辺りを見回し、突然、全てが終わったのだと気づく時がくるのだろう。

*『日はまた昇る』1926年発刊。



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渡邊拓也 | Takuya Watanabe
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世界各国の鎖国政策が次第に始まり、日本でもオリンピックが延期になった。7月からベルギーのアーティスト・イン・レジデンスに滞在する予定だった私にとって、初めから他人事ではいられなかった。それでも自分にできることは外出を控えるくらいで、その他には本を読んで知識を得たり、語学の勉強をしたりすることくらいだった。そうした当初の守りの体勢によって、私はストレスを溜め込み、徐々に気持ちを沈めていった。

このままでは持たないと思い、まずは生活を見直した。人が街から減った時間帯に運動をして、日当たりの悪い部屋の窓際で極力太陽の光を浴びて、時には瞑想をして気持ちを落ち着かせた。次第に、日による調子の良し悪しや、自分が今どうしたいのかという身体が送ってくるシグナルに普段以上に敏感に反応していることに気づいた。また同時に、買い出しへ出かけると、人との接触はもちろんのこと、触れるもの、自分の息遣いにまで自分が普段よりも過剰に意識していることにも気づく。

次第に、このまま誰とも会えない生活がずっと続いたらどうなるのだろうかと妄想するようになった。当たり前と思っていた美術館、映画館も何もなく、人が集まることすら必要性がなければなされない、それが普通になったらと。近年の私の制作活動は、場所に赴き、人と出会うことから始まり、常に人との関わりを伴うようなスタイルとなっている。もしもこの状況が常態化した場合、今までのやり方では間違いなく成り立たないだろう。そんなことを考えながら制作のための準備をしていると、ある習慣ができた。それは、海外に住んでいる知り合いとビデオ通話をしながら、Googleストリートビューを使って、私の行ったことのない彼らの街の「いつもの場所」を紹介してもらうというものだ。しばらくのあいだ画面の中の世界で過ごして、妙な(しかしどこか心地よい)疲れを感じつつ、自宅の机の前に戻ってくる。これは、なにか精神だけが遠くへ飛んでいき、知る由もなかった誰かの日常の中に突然お邪魔して、即座にまた自分の身体に戻ってくるような体験。こうして画面収録された旅の映像がどんどん溜まっていく毎日を過ごしている。

これまでの自宅での隔離生活を振り返ると、今までなかったほど自分の身体の状態に対して気を配るようになり、一方では、身体を離れて遠くの場所へ精神のみ飛ばしている。この身体と精神がバラバラに活動する状態は、これまでの私の生活から考えると変な状態に思える。しかし、こうした世界的な社会環境の変化は、私だけでなく、多方面で少しずつその状態を受け入れていくのだろう。そして今は、不自然に思えることも「普通」のこととして溶け込んでいく。そう思うと私たちが普通と捉えていることは、本当に偶発的にそこにそうあったということを思い知らされる。この慣れない「普通」に抗わず柔軟に受け入れることが、目まぐるしく変わる世界に対して対応できる唯一のことと思いつつ、私は自宅でこのテキストを書いている。

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5月下旬現在、日本を含め、これまで感染が拡大していた諸外国でも少しずつロックダウンを緩和する流れが見えてきています。
私たちがこれから迎える新しい日常はどのようなものになるのでしょうか。

世界中を移動し、国際的なネットワークを形成しながら制作するアーティストと、それを可能にする従来のアーティスト・イン・レジデンスの仕組みは、これまでとは異なるあり方を模索することを迫られています。
そもそも、コロナ以前から「移動の自由」は、誰にでも許されたことではなく、ある特定の人々がもつ特権でした。
壁で仕切られた隣国に渡れない人々、パスポートも市民権も持たない難民、など世界には多くの移動を奪われた人々が存在しています。

物理的な移動が困難になり、ますますデジタル上のコミュニケーションが増えている現在の社会で、アートはどのように創造性を展開していくことができるのでしょうか。
アーカスプロジェクトでも、今年のプログラムをどのように皆さんにお届けしようかといろいろと思案しているところです。
近日中に皆さんとお会いできることを楽しみにしています!








by arcus4moriya | 2020-05-23 13:00 | AIR_2020


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