10/3 エリカ 農研機構見学 Erika - visit to NARO -
遺伝子組換え蚕についてリサーチしているエリカは、つくばで遺伝子組換え蚕を飼育している農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)に見学へ訪れました。

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農研機構



まずは研究所内の展示室で資料を見せていただきながら研究者の方にお話しを伺います。
お会いしたのは、生物機能利用研究部門、新素材開発ユニットの亀田恒徳さんです。

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特に、エリカが関心を抱いているのはクモの糸の特性を持ったシルクを作ることのできる蚕です。
クモは自然界でもっとも強い糸を作ると言われていますが、共食いしたりするので大量に飼育することが難しく、そのままでは製品化には向いていません。
そこで遺伝子組換え技術によって蚕にクモの糸の強さを持つシルクを作らせることで、大量生産が可能になります。

蚕は成長周期が短く、かつ飼育にかかるスペースが小さいので、人間が必要としている成分などを大量に培養するのに向いているそうです。
また、蚕を遺伝子組換え技術の開発に使用する利点には他にも、蚕は人間により完全に家畜化された生物なので自然界では生きることができず、他種と交配して環境に影響を与えるリスクが少ないなどの理由があります。
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生体安全性が高く、皮膚の再生治療や手術での使用など医療用のシルクの開発も進んでいます。

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ブラックライトに当たると蛍光に光るタンパク質を含んだ遺伝子組換えシルク


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2人の話は、未来の宇宙での蚕の利用の可能性などにも拡がっていきました。


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農研機構にも繭から生糸を生成し、絹糸、織物にするまでの機械が揃っています。
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研究所のシルクで作った試作品です。



実際に今繭を作り始めている遺伝子組換え蚕を見学することができました。
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約20000匹の蚕たちが糸を吐き出している「さわさわ」という音が部屋中に響いていました。
今までニュースなどで読むだけだった遺伝子組換えという先進的な、ほとんど抽象概念でさえあった事象が、ここでは音という実態を持って迫ってきました。
そこには理論ではなく、科学者、飼育に携わるスタッフと小さな生き物とのケアの関係が物理的な空間に展開しています。
養蚕業は遥か紀元前2000-3000年頃に中国大陸で始まったと言われ、それ以来品種改良を重ねた蚕はより長い糸を生産するようになり、その過程で人間に完全に依存する家畜生物になりました。
餌となる桑を自分で見つけることもできず、成虫し蛾となった後は羽はあっても飛ぶ能力もありません。
シルクという素材がいかに人間の歴史と生活の中で重要な役割を果たしているかを考えると人間もまた蚕に依存していると言えるでしょう。

エリカが今日のために用意していた質問には以下のようなものもありました。

"A scholar and theorist of science and technology, Donna Haraway, talks about sympoiesis and the entanglement of humans and nonhuman organisms, evident on the microbiological level. She calls for a an urgent reexamination of what it means to be human.
With GMO silk being incorporated into the human body / dermatologically fused onto the human body, humans and silkworms are intersecting on a genetic level. What are your thoughts about this?"
「ダナ・ハラウェイが人間と人間以外の生物の微生物学的なレベルに見られるもつれ合いとシンポイエーシスについて語っています。ハラウェイは人間である/人間として存在するとは何を意味するのかを再検討することの必要性を呼びかけています。遺伝子組換え蚕のシルクが人間の体に取り入れられ/皮膚科学的に融合されることは、人間と蚕が遺伝学的な面で交差することを表しています。この状況に関してどう思いますか?」
(遺伝子組換え技術では他の生物の遺伝子を蚕に組み合わせているのではなく、ある必要なタンパク質を組み合わせています。)

人間が地球全体の環境に多大な影響力を持つ時代にあって、「自然をコントロールする理性的な人間」という主体を解体し、人間と他の生物/非生物との相互依存/互恵関係を見つめることで、いかに彼らとよく生き/死ぬかということを想像することが求められています。

人間の体がシルクという素材(蚕)をどのように受け入れるのか(accept)というエリカの関心に対して、亀田さんは、研究では「受け入れる(accept)」という言葉ではなく、人間の体が「無視することができる(negligible)」という言葉で表現していると言われていたのが印象的でした。

「無視することができて」かつ共に存在するとはどのようなあり方なのでしょうか。

数千年に渡る人間と蚕との相互依存関係は遺伝子組換えや再生医療というテクノロジーを介して更なる段階へと進み始めています。
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この日見学は4時間にも渡り、亀田さん始め農研機構の方々のおかげでエリカは大変充実した時間を過ごすことができました。
ついに叶った遺伝子組換え蚕との邂逅は、大きなインスピレーション源になったようで、帰りの車の中では、これからのプロジェクトの進め方を興奮気味に話していました。

これからどのようにリサーチが展開していくのでしょうか。

エリカのリサーチを構成する重要な思想家にダナ・ハラウェイがいます。
彼女は80年代に発表した「サイボーグ宣言」で知られていましたが、近年は人間と動物や、バクテリアなどの有機物、無機物との関係性を再考する思想を精力的に発表しています。
特に2016年に出版された最新の著作『Staying with the Trouble: Making Kin in the Chthulucene』がエリカの活動を考える上で重要ですが、まだ日本語訳が出版されていません。
それ以前の著作『犬と人が出会うとき 異種協働のポリティクス』でもハラウェイの人間と動物とのオルタナティブな関係性についての思想に触れることができます。
もしくは『現代思想 2017年12月号人新世 ―地質年代が示す人類と地球の未来―』では最近の論文の邦訳が掲載されているので、エリカのリサーチに興味を持たれた方はぜひチェックしてみてください。


by arcus4moriya | 2018-10-03 16:29 | AIR | Comments(0)
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