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11/16 イェンのリサーチ_ダダコンペ Yen's research about DADA competition
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こんにちは。石井です。たいへん遅くなりましたがアーティストの制作活動レポートを更新します。イェン・ノーが滞在中にリサーチしている「マヴォ/MAVO」について、またその原型とも言える、第一次世界大戦のさなか、スイスはチューリッヒでおこった「ダダ(イズム)」についてある日、ひとつの情報をSNSから入手しました。
ダダって?マヴォって何?という方もいるでしょう。最初はわたしもそうでした。恥ずかしい事に、遅ればせながらイェンというアーティストを介して知る事になります。
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彼女が調査テーマにしている、「ダダ(イズム)」、そこから派生し1920年代の日本におこったアヴァンギャルド「マヴォ(MAVO:前衛芸術集団)」の芸術運動を知ったきっかけは、1人の朝鮮人の存在から始まります。それは詩人/小説家の李 箱(イ・サン)。彼が残したものを手がかりに、彼女が今回日本で出会い、より「日本のアヴァンギャルド(前衛芸術)」について深く知るためにインタビューを行う行為は、MAVO(1923年-1925年)が起こった当時の東京をこの目で観て確かめ、感じたくてようやく1920年代後半〜30年代頃に朝鮮から日本へやってきた李 箱(イ・サン)の境遇にも似ており、タイムスリップして追体験をしているようにも見えます。
(詳しくは、朝重さんによる白川昌生さんを訪問したときのブログ、藤本さんによる五十殿氏を訪問したときのブログを参照
イ・サンは1つの芸術運動が終わりかけた後の1936年、降り立った東京の地のその印象をのちに「東京」という随筆に残しています。それが遺稿となったイ・サンの東京への憧れと幻滅。....というものを知ったイェンには、日本の現代のアートシーンがどう見えているのでしょうか。

それから90年以上経った現代。
イェンが来日する前の2016年日本の初夏、東京ではダダイズム誕生100周年を祝って様々なところでイベントが行われていました。(後日談になりますがイェンの日本滞在も終わりに近づいてきた頃、彼女自身がパフォーマンスをすることになったASAKUSAでも、初春に既にダダ関連の展覧会「1923」が開催されていました。)1923年といえば東京大震災が起きた年。第一次世界大戦中のスイス、東日本大震災があった2011年の日本もそうですが、自然災害や戦争に何かしらの影響を受けて「表現者」はその現状を目にして、または体感して、なにか表現し伝えることに存在する/発信する/動き出すように見えます。

余談ですが、中年世代ではウルトラマンに出てくる敵の宇宙怪獣シリーズの「ダダ:別名/三面怪獣」は聞いた事があるかもしれません。その「ダダ」という名前はダダイズムが由来なのだそうです(脚本家の山田正弘氏によって命名)。ウルトラマン怪獣キャラクターの生みの親、成田亨のつくり出したキャラクターでもありました。
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スタッフも前もって「マヴォは何だ、ダダは何だ」とサーチしているうちに、ほどなく、たまたま見かけた「ダダコンペ」という出来事をイェンに知らせる事になります。

「そういえば東京ではこんなことがあったらしいよ。」

東京都内がダダ100周年を祝う展覧会やパフォーマンス、イベントでにぎわう中、関連ワードに出てきたツイッター上の「ダダコンペ」(正しくは「ダダイズム誕生100周年・アートコンペティション」)。
8月26日にそれらのコンペが終わったことは、日本の前衛芸術マヴォやその源となるダダの動きを調査し始めたイェンにとっては、寝耳に水のできごとでした。
奇しくもイェンを含め、アーティストが来日したのも8月25日。実に、既に過ぎていた事象でした。

彼女は着々と、次のオープンスタジオに向けて計画している「マヴォについて話さない?日本のダダ・ムーブメントのための、日本(現代)美術の位相の仮設プラットフォーム」でのオープンディスカッションで、日本アート界に見過ごされ、制度化されてこなかった1920 年代半ばに活躍した前衛美術グループ、マヴォの思想を再考するため、そして90余年経った今、日本では取り残されたマヴォについて現代において知識を共有すべく、有識者にアポをとる日々が続いていました。

そんな中で、イェンはスイス大使館主催のダダイズム100周年で開催されたSNSを活用したダダ・アートコンペについて調べ始めます。コンペに応募される作品はネット上に投稿され、今の時代だからこそ可能となった審査方法で一般からの「イイネ」の数で優勝者が決まる、というもの。コンペをめぐり、様々な人たちの葛藤や思惑が巡る興味深い流れが、これも時代を反映したネット上で繰り広げられていました。ツイッター上ではそのまとめもあり、少し前に過ぎた出来事を知るのに時間はかかりませんでした。
そして大賞を受賞した動画作品をみたイェンは、映像作品の中にいる登場人物と、それを作ったアーティストに興味をもち、面会したい、ということに。ちょうどその頃、一連のコンペで大賞を獲得する経緯がドキュメントとして出版された書籍情報を手がかりに、「メインストリーム」というところにアポをとりました。

実は滞在アーティストがリサーチのためにアポを取って会いたい、話を聞きたい、という要望には、いろんな「日本人」がいます。これまでにも社会人類学者や、K-1格闘家として後に世界的に知られる事になるパフォーマー、山伏になろうとした人や、実際に月山(がっさん)にいる山伏、暴走族/旧車会や改造車を作り、走っているちょっとヤンチャな人、刺青を入れるプロの彫り師、年間300日は日本にいないという世界の3本指に入る航空写真家、などなど...。私たちコーディネーターも滅多に会えないような日本人に会う機会がありました。今回は...いや...まさかね...となんとなく察しがつきながらも、このアーティスト?政治活動家?と面白い展開になってきました。

同時進行でオープンスタジオを進めながら都内のとある場所で、ついにご本人に会う事になりました。(実はこの面会、アーティストより私たちがかなり緊張していました。)
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受賞されたのは織田曜一郎さん。という名前までわかっていて初対面の2人。ご挨拶するととても気さくなジャーナリストの方でした。早速作品について、またその作品をコンペに出すことになった経緯を聞きました。また一方で、彼女がなぜ「マヴォ」についてリサーチしているのか、韓国と日本の、西洋から渡って来た芸術(運動)の歴史の伝わり方も踏まえて経緯も説明しました。
織田さんは、編集者/ジャーナリストであってアーティスト、ではない。アートのことはわからない。と言います。しかし、アーティストである/ないこと以前に、「言語」「文字」や「声」を使ってものを表現することや他者に伝えるという共通点をもつ2人が共有することは、現代のダダ・コンペやマヴォやダダ、政治的思想や政治活動というものの「表現の伝わり方・伝え方」を通じて、互いを理解しあう上でも時間はそうかかることはなく、相通ずるものがあったようでした。
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織田さんの映像作品の中でモチーフとなる(アクションをおこしている)人物についての話にもなりました。それは後日、彼女がオープンディスカッションを実施するにあたり、パネリストとして誰に参加してもらうかの指標とするためにも、把握する必要のあった人物像のひとりだったようです。
ダダ・アートコンペの出品動画作品には九州ファシスト党(我々団)の外山恒一さんが偽の選挙運動をしている様子が流れています。良いファシストだそうで、ご存知の方はお名前を聞いただけでYoutubeなどでご覧になったこともあるかもしれません。織田さんが制作した「外山恒一の「ニセ選挙運動」〜現代美術パフォーマンスとしての記録〜は結果、大賞になるわけですが、織田さんを介してイェンは外山さんの思想・活動について知り始めます。
マヴォが全盛期だった時代の社会背景から見えてくる思想や政治的事象の推移、表現者の出来事をリサーチしていたイェンは、(織田さんがしでかしていることもアーティスティックであると同時に、画中での発言・表現・行っていること自体がパフォーマティブだという点で)「外山さん自身もアーティストですね」と笑みがこぼれました。
ここで外山さんと接触することを試みます。織田さんに繋いでもらい、交渉することになりました。
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イェンの想定している「知を共有する」人物像にアーティスト、アーキビスト、キュレーター、思想家や政治運動家、などの候補がどんどんあがってきました。アーティストの視点から、芸術家の動き(芸術運動)を知る事によって、時代背景や当時の思想が見えてくる。それを現代の表現者はどのように価値づけ、または意識しているのでしょうか。イェンがプレゼンツのパネルディスカッション「マヴォについて話さない?」が、どのようなディスカッションになるか、楽しみです。
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リサーチにご協力頂いた織田さん、ありがとうございました!

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(最末尾の写真:加藤甫)













by arcus4moriya | 2016-11-16 09:03 | AIR_2016
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