国際審査員による審査コメント Comments for selection from Invited international curator 2013
今年度の国際審査員キース・ウィトル氏による審査コメント

ロドリゴ・ゴンザレス・カスティージョ
版画は日本において物語の歴史的衰退と繁栄を語る上で重要なものです。時が経つにつれてその形式は(何世紀にもわたって形式や特徴が絶え間なく変わるかのように)浮世絵からより現代的に大変人気のある「マンガ」のように変わってきていますが、いまだに版画は日本芸術の特色であります。
 メキシコ出身の視覚芸術家として、ロンドリゴ・ゴンザレスは特に日本の木版印刷(木版画)に興味を持ち、現代の状況において木版画が、その知識やアイディアの交換を通して生み出す意味の可能性を提供しようとしています。
 彼が過去の作品においてサインシステムへの興味を示したように、アーカスへの応募内容からは、彼は記号論やコミュニケーション理論、また瞬間的・感情的なつながりをについて実践したいのだろうと考えられます。またこのプロジェクトによる調査では日本だけにある文化的なイメージや象徴についての理解を彼に提供するものと考えられます。

 彼の応募では特に3つのことが際立っていました。1. 普段美術館や画廊に行かない人や現代アートについて知らない人に彼のアイディアや製作過程を共有する機会になること 2. アートをただ静的な対象(絵画や彫刻など)だけでなく、広く参加できるものとして捉えていること 3. 彼のプロジェクトに参加することが、普段出会わないさまざまな人々と知り合いとなる基盤を作り出すこと。
 新しい人間関係や対話を創造することに深く興味があり、日常生活で起こることや人々との間のつながり、参加者各自の芸術活動からひらめく芸術家として、彼の提案は日常生活を感情豊かなものにするというねらいが明らかでした。

 彼の参加型プロジェクトは陽気な面あるのはもちろんのこと、日常生活と芸術の障壁を壊すことや人々の創造的な側面を表面化することが教育的な面から魅力的です。
 
絵画や版画を用いて、さまざまな角度から守谷での毎日の生活をそのまま示し、同じ都市のお年寄りと子供たちのあいだにある一体感を共有し、プロジェクトの参加者同士が新しい目的や人間関係を見つけることができるようにすることを彼は望んでいます。

参加型プロジェクトを通して、アートが個人とグループの間でコミュニケーションツールとなり、人々の対話を生み出すことで、自身たちのプラットフォームを創造することできます。彼のプロジェクトと取り組みはアーカスプロジェクトの目的の一部にとてもふさわしいものです。


シビレ・ノイマイヤー
シビレ・ノイマイヤーは、非常に興味深く、また才能を開花させているアーティストで、彼女が取り組んでいる作品は、彼女の聡明な洞察力と同じく優れたものです。彼女のレジデンスへの申込内容は、彼女のプロフェッショナル精神を示しただけに留まらず、私は彼女の見識の深さ、想像力、意欲に感銘を受けました。彼女の幅広い関心知識は、現代アート、映画、文学、科学史、科学理論やそれ以外をも包含しています。彼女がアートの実践に尽力することを通じてプロフェッショナルとしての経験を積み重ねていることが、彼女の応募内容及び作品からはっきり表れています。

同時代の鑑賞者として私は、どのようにしてノイマイヤーのプロジェクトが、制約のない中から彼女がテーマを選ぶことで生じ、一連のプロセスを通じて進化していくのかに感銘を受けます。それらはしばしば特定の場所、特定の時間により形成され、多くの学問分野にまたがって協働的に制作することに重点が置かれており、専門家と専門ではない者とがさまざまな分野をまたいで関係し合います。紙、彫刻、写真、ビデオ、あるいはそれ以外の形式であろうと、ノイマイヤーの作る作品には確かな理論的な分析と明確な方法論に裏付けられたコンセプチュアルな快活さ、美、鋭さがあります。

生物学、考古学、植物学・地質学の研究、分類と変形、過程と時間に対する彼女の関心は、創作的・詩的な知識と科学に基づく知識との境界線を、芸術的、象徴的に曖昧にさせてくれます。

彼女の作品は、馴染みのあるもの-空間や背景-を表現しながら、しかしそれらに対する私達の認知を、アイディア、環境、対話を通じて変化させます。それは創造的な行為として作品との相互作用と同じく大切なものです。彼女の作品は普段は隠されているものを目に見えるようにし、また、一見つかみどころがなく克服できないものの無視することのできない大切な力へと、私達を引き込ませるのです。

ノイマイヤーのレジデンスの提案は、文化と自然に関する重要な問いに取り組んでいるとともに、そのプロセス及び調査には十分な土壌があります。

彼女の以前の作品の中に、環境への関心についてミクロからマクロまで探求した作品がありますが、それは様々な手法で拡張可能なものです。私達は自然をどのように知覚すべきか。汚染や廃棄物については?森林や河川は?食料は?日本の生活様式において“伝統的”なものは何か、そして彼女がそこから何を学べるか?人間と自然との繊細なバランスについてもう一度考察することを余儀なくされた出来事-放射線、エネルギー、水、材料、食糧、人口の問題-社会が直面している恐ろしい問題-、それらが明確に描かれ、光が当てられ、時を得た説明が与えられています。
 
私達の日々の意思決定、社会的・環境的な文脈が私達の一連の行動をどのように形作るべきか、地方と都会の双方の人間が今直面している環境関連の問題など、彼女のより広い関心が、確かなコンセプトの枠組みと芸術的なプロセスを通じて探求されるだろうと私は確信しています。それは、私達がそれらの問題をどう考えるべきか、あるいは問題解決はどのように進んで行くかといったことを押しつけることなく、環境の衰退という重要かつ差し迫った課題にどう私達がアプローチしていくのかについて、地域レベルで開かれた対話を行っていく機会を提供してくれます。

私は、シビレのレジデンスへの提案は、よく熟慮され、綿密で、日本だけでなく私達全てにとって非常に価値のあるものだと確信しています。プロジェクトを完成へと前進させる彼女の力、彼女の着想を展開させるための意欲と献身。彼女が茨城や守谷で行うリサーチ活動や、様々な段階で行われる地域住民との関わりは、レジデンスの本質や趣旨に適したものになるでしょうし、さらには、より広くアーカスプロジェクトとしてもふさわしいものになるでしょう。


ナンデシャ・シャンティ・プラカシュ
もし現代美術作品が、制作された特定の国の政治・経済状況に影響されているとしたら、選考過程でナンデシャ・シャンティ・プラカシュの作品と出会うことは、現代美術とグローバリゼーションの関係性や、特別な「政治」「経済」への問題提起を浮かび上がらせます。
 彼の制作でよく使われるモチーフは、社会や政治でよくある議論であり、プラカシュは日常生活や仕事から発見したもの、材料は捨てられたくずや、拾ったもの、短命なもので、それらそのものの形態やメディアを使用することで、現代芸術の過度な営利主義への発展から後退するよう提案しています。それらは現代政治の価値観を拒否する明確な批判になります。
 時間や歴史、変化の過程を積み重ねた彫刻を通し、毎日目にはしてもあまり重要でないありふれた人々の日常生活を利用することによって、プラカシュは国際化の過程と地元文化の再構築について調査しています。その再構築によって都市化された文化と自然が対等な関係を築いています。
 彼の作品はスタイルや材料の面では、特徴的なものでないのですが、‐主要な目的としてその地域の人との交流やコミュニケーションが繰り返されるプロジェクト‐ 過程、時間、場所、環境そして大衆に広くアイディアの普及、地域の環境、人々、参加者、社会が制作の中で原理を有効に活用し、社会的に実体的にプロジェクトの調査を理解するための調査になっています。プラカシュのテーマと制作への取り組みは、アーカスプロジェクトにふさわしいものであると私の心をうちました。

 急速な近代化を反省する時代である最近の日本の状況において、異例の速さで都市化や都市膨張が広がっているアジア太平洋の状況で、プラカシュのプロジェクトを通して、社会そして都市は、先入観を変え、地方、多様性、相違点、特殊性といったメリットが強調され、新しい議論が形成され、異なるグループと付き合うチャンスが生まれることとなるでしょう。

 彼は社会と政治的な態度について議論し、作品制作をとおして開かれた対話を行う予定です。プラカシュの提案では、作品制作の参加者自体を、現代世界の一般認識をより高めるための手段として、重要なものとして考えています。
 
場所や事物、地域を扱うことで、新しい関係や議論を創造することに深く興味を持っており、教育プロジェクトでかなり数の経験を持ち、公共空間を明らかに変化させる技術をもつ芸術家として、彼のプロジェクトは我々の既存のものの見方を変え、違った見方を意識させることを促進します。
 このような彼のプロ意識、機転、想像力、制作への意欲によって、滞在中のプロジェクトの結果を疑う余地はないでしょう。彼は社会の中の芸術の可能性を引き出し、さまざまな価値観を表現していくでしょう。


キース・ウィトル氏についてはこちらから
http://www.arcus-project.com/jp/topic/2013/topic130521133839.html


Comments for selection from Keith Whittle

Rodrigo Gonzalez Castillo
Printmaking plays an important part in the historical ebb and flow of pictorial storytelling in Japan. Though over time its form has changed - appearing in ever-changing forms and characters across the centuries - from Ukiyo-e to the more contemporary and extremely popular pictorial story telling form “manga”, it is still a special feature in Japanese art.

As a visual artist from Mexico, Rodrigo Gonzalez is particularly interested in woodblock printing in Japan (moku hanga), how in a contemporary context it could offer a means through which an interchange of knowledge and ideas might take place.

As in his previous work which explores the system of signs, his ARCUS residency proposal can be interpreted and understood both in terms of semiotics or communication theory, or just as valid, in terms of the instantaneous and emotional bond he aims to achieve. As an exploration it can also be understood as one that will lead him to an understanding of the meaning behind culturally-distinct images and symbols within Japan.

Three specific threads stand out in his application: 1. The opportunities his ideas and processes afford people who usually do not visit museums, galleries or know about contemporary art. 2. His insight that art is not just about static objects (painting, sculpture etc), but can be participatory and inclusive. 3. That participation in his projects creates a platform where very different people, who normally never meet, participate together and get to know each other.

As an artist deeply interested in the creation of new relationships and dialogues, one finding inspiration from the connections between everyday life situations, phenomena and people. And relationships among participants, or between the respective artwork and the participant, it was clear from his proposal that his aim is to establish art as something accessible that enhances daily life.
The educational as well as playful aspects inherent in his participative projects, appeal as they function as a means to break down the barriers between art and everyday life, bringing to the surface everybody's creative side.
Working with images to represent a direct and intimate panorama of every day life in Moriya, with drawing and printmaking as primary tools, his ambition is to transmit a feeling of community, shared between the children and the elder people as members of the same city; and to activate a visual communication in which the participants of the project could find new meanings and relations.

As a platform for participatory art that can initiate and broker conversations between individuals and groups to communicate and to create a platform by themselves. His project and approach is particularly fitting the philosophy behind the ARCUS Project residency programme.


Sybille Neumeyer
Sybille Nuemeyer is a highly interesting and talented emerging artist, who's engaging artworks are matched by the intellectual insight that she brings to them. Her residency application not only demonstrated to me her professionalism, but her obvious resourcefulness, imagination and dedication. Her wide-interests and knowledge encompassing contemporary art, film, literature, science history and science theory. Growing level of professional experience, along with her commitment to developing her practice, was vividly displayed in her application and through the work she submitted for consideration.

A contemporary observer, I am impressed by how Nuemeyers’ projects evolve from a singular process, born from an open-ended engagement with her chosen subject area. Often given shape by a particular place and time, with an emphasis on interdisciplinary practice and collaborative working, they involve both specialists and non-professional advocates across numerous fields. Whether through paper works, sculpture, photography, video, or other forms, Nuemeyer creates works of conceptual vivacity, beauty, and poignancy underpinned by strong theoretical analysis and clear methodology.

Further, her interest in biology, archeology, botanical and geological studies, classifications and transformations, process and time offers us an artistic and symbolic blurring of the borders between fictional, poetical and science-based knowledge.

Presenting the familiar - spaces and contexts, but shifting our perceptions of such through investigation of a proposition, or situation and discourse in any given work - as much as part of the creative act as interaction with the work. Her work makes visible what is often hidden and engages us with forces that though often seemingly intangible or insurmountable are too important for us to ignore.

Nuemeyers’ residency proposal tackles some of the key questions about culture and nature and is fertile ground for process and research.

As with previous work her chosen theme, one that explores environmental concerns - micro to macro, is scalable in different ways. How should we feel about nature? About pollution and waste? About our forests and rivers? About food? What is the 'traditional' in the Japanese way of life, and what can might she learn from it? The events that have recently forced us to once again to consider the delicate balance between humankind and nature - radiation, issues of energy, water, materials, food, and population - the formidable challenges societies face by such - are clearly outlined and highlighted and make for timely exploration.

Her interest in larger concerns, our daily decisions and how social and environmental contexts should inform our courses of action and environmentally related problems that the people in both rural and urban areas now face, will I believe, be explored through solid conceptual frameworks and artistic process. Which though not dictating how we should view these problems, and or how we might go about finding solutions, offers a chance for open-dialogue at a local-level on how we best approach important and pressing issues concerning the reversal of environmental degradation.

I believe Sybille’s residency proposal is well considered, thorough and extremely relevant, not only to Japan, but to us all. Her ability to push projects forward to completion, dedication and commitment to developing her ideas. Coupled with research she will undertake in the area of Ibaraki and Moriya city, engagement with its citizens at all levels, make her particularly suited to the nature and intent of the residency, and wider ARCUS Project programme.


Nandesha Shanthi Prakash
If contemporary art is informed by its relation to the particular political and economic circumstances of any given country from which it derives, encountering the work of Nandesha Shanti Prakash, during the selection process, demonstrated that contemporary art and it’s relation to globalisation, raises yet further important political and economic questions.

Questioning the social and political, a recurrent motif in his work, Prakash’ constructs objects from those found in everyday life and work - which in their modes and media - discarded scraps, found objects, and ephemera - propose a retreat from the growing excessive commercialism of contemporary art practices. And which in themselves assert a sage-like refusal of contemporary politicized values and their obvious, critical language.

By utilising the ordinary from people’s daily lives, the everyday the seeming peripheral through sculptural works layered by time, history and process of transformation, Prakash’ deftly and subtly explores the process of globalisation and restructuring of local culture - urbanisation being the most spectacular aspect of this restructuring process, and the conflicting relationship of culture and its relationship to nature.

Exemplary for his eclectic approach without a signature style or material – but reiterative projects where communication and communion with the local can be seen as a central motivation – process, time and space, environment, dissemination of ideas to wide audiences. Where local environments, people, participation and community are principle assets within the work, his project research encompasses research to understand the site both socially and physically. Prakash’ immediately struck me as an artist whose themes and approach to his practice would be ideally suited to the ARCUS Project Residency Programme.

In the context of Japan, a country currently undergoing a period of considerable reflection on the shortcomings of modernity, and in the context of wider the Asia-Pacific region, where urbanisation and urban expansion are taking place at unprecedented speed. Prakash’s residency project and his interest in society and our relations in the city, will, I believe, initiate and broker new conversations, shift preconceptions, highlighting the merits of the local, diversity, difference and distinctiveness - making spaces for conversation between differing groups.

Questioning social and political attitudes, and characterised by open-endedness and dialogue, leading to object, event, and process-based work. Nandesha Shanti Prakash proposal utilises important and extremely relevant strategies, - both in his chosen research and stated approach which consider the participation of the population in the production of artworks; as a tool of mediation in order to raise a better general awareness of the contemporary world.

As an artist deeply interested in the creation of new relationships and dialogues working with site, object and communities. One with considerable experience of participatory educational projects, along with his clearly evident skill in transforming the common place, his project will act as catalyst to make us aware of different perspectives, one that also opens up new possibilities to change familiar views.

This along with his professionalism, resourcefulness, imagination and dedication to his work, will no doubt result in a significant project during residency. One that brings out the potential of art into society and represents diversified values.


Information about Keith Whittle is here.
http://www.arcus-project.com/en/topic/2013/topic130521133839.html
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by arcus4moriya | 2013-11-26 18:57 | AIR | Comments(0)
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