「アートと地域を考えるシンポジウム」
7月7日(日)につくば国際会議場にて開催された、「アートと地域を考えるシンポジウム」
当日は大変暑い中、県内のみならず県外からも多くの方々にお越しいただきました。

茨城県副知事と守谷市長による主催者挨拶のあと、
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来賓挨拶に、近藤文化庁長官よりお言葉をいただきました。この日が最後の長官のお仕事、という言葉が印象的でした。以前に長官がAIRの素晴らしさをお話されていたコラムを目にした記憶がよみがえります。
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最初の基調講演は日比野克彦さんによる「H+H HIBINO HOSPITAL vol.63」。
1999年からサブタイトルに「日比野美術研究室附属病院放送部」とありますが、まだインターネットが盛んでない頃に始まった、ネットを介して「オンライン」のアートセラビーを経た参加者に、月に一度「オフラインパーティー」と称して(そのときまだあまり知られていなかった)「ワークショップ」を行う、というプログラム。既に62回も行われ、それを最初からさかのぼって歴史をお話いただきました。
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H+Hで市民と考え実践するWSを通じて、アイディアのつぼみが膨らみ、その後全国各地で行われているプロジェクトへと開花していった事例へと続きます。vol.34で立ち上がった「明後日新聞」のテーマから、新潟へと渡った「明後日新聞社」や「明後日朝顔プロジェクト」、また、朝顔の種から「種は船」、「TANeFUNe」へと移行していったことや、被災地で行われたワークショップなど、様々な地域の方々とどうやって関わっていったのか、経緯がわかります。

また、今回、講演タイトルにvol.63をカウントしていたものの、ワークショップらしきものはないのだろう、とふんでいた私たち。日比野さんのサプライズな「7月生まれ、手を挙げて〜」の言葉で、モニターに釘付けに。
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数名の7月生まれの参加者が壇上にあがると、『花瓶の中から好きな花を選んでください、』と。
各々の7月生まれの参加者は好みの花を選びます。色とか形とか、今日身につけている服の色とか。無意識にもその花を選んだ理由を聞き出す日比野さん。それもアートセラピーの一つだったりするのでしょうか?
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普段、H+Hでは「全くアートがわからない」という人も気負うことなく、興味があれば自由に参加できます。生活の中にあるものから、または環境から、参加者との会話からインスピレーションを引き出して普段使わない脳や身体を使うような、そんなワークショップを展開しています。
ぜひ、これを機に次回のH+Hに参加いただければ有り難いです。


次に、NPO法人BEPPU PROJECTの山出淳也さんによる基調報告です。
山出さんは1996年度の初代日本人アーカス招聘アーティストでもあります。その後、海外でのAIRを経て、現在は大分県別府市での大規模なアートプロジェクトに携わっています。
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山出さんが2005年に立ち上げたBEPPU PROJECTの拠点、その土地柄として特徴的な観光地・温泉地である「別府」という環境に、アーティストが関わることによって継続されてきたこれまでの事例を示してくれました。具体的な観光客の変化、世代の比較、ターゲットの推移など、数値化することによってより明確な将来的なビジョンをわかりやすくみせていただくことができました。別府ならではの特産品、名物もおいしそう!でした。
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そのBEPPU PROJECTの使命と取り組みに関して印象的だったのが、
アートは地域の課題を「解決」しない。問題「提起」を行う。』というアートの位置づけ表明です。
それは町おこし的にアートが用いられ流行っている昨今において、地域系アートプロジェクトの核心を問うような表明であるとも思えます。例えば観光地でなくとも守谷市のような、比較的都心へのアクセスもよく、住み良く、街の問題・課題がなさげな街だからこそ、アーティストが入り込むと見えてくる問題提起ができる可能性を秘めているようにも感じ取れます。(それもまた、19年続いた今だからこそ、言えることでもあります。)

また、国際芸術祭「混浴温泉世界」では市内全域で、しかも市民が主体となってアートプロジェクトを開催した2012年度の回、市民文化祭である「ベップアートマンス」の開催、「国東半島アートプロジェクト」における地域展開(ツアー型のアートプロジェクト)....等々。地域の特徴に根ざした、そして海外のアーティストもレジデンス滞在したくなるような、どれも実に興味深いプロジェクト内容を聞かせていただきました。

次の講演者はティファニー・チュン氏。2006年度招聘したアーティストです。
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ティファニーは2006年度に滞在した後も、海外での国際展に参加し、日本へも幾度も再来日を果たし、地道に作品にともなうリサーチを続けています。地域の過去の歴史や土地のリサーチを重ね、マッピングという表現で制作する一方で、映像作品や舞台美術の分野での活動報告を聞かせて頂きました。
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次に事例発表として、水戸芸術館の芸術監督、浅井俊裕さんに発表いただきました。
水戸といえば現代美術センター。館内の展示のみならず、常に何かアーティストによって町並みが変わるプロジェクトを展開しています。
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空き店舗や商業施設の中にアート作品がある、カフェ・イン・水戸。街の中にアート作品を置いて、期間が過ぎたらなくなってしまう、そこから次にはじまったのが「お土産プロジェクト」。名産とデザインを通してクリエイトされたお土産「チョコ納豆」は私たちも守谷S.A.で見たことがあります!他にも「高校生ウィーク」など、学生や市民も参加できるプログラムの紹介をして頂きました。


最後にパネルディスカッションが行われました。
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南條氏、日比野氏、眞島氏、綿江氏、そして守谷市長がパネリストとして登壇され、「アートプロジェクトは地域のために何ができるのか」をテーマにディスカッションを繰り広げました。

まずはアーカスプロジェクトがどのように始まったのか。その初期過程では、若手のアーティスト支援を軸に、滞在時は制作やリサーチなどの『プロセス重視』であるものの、滞在後にレジデンスプログラムの成果としての展覧会を開くことも提案として考えられていたそうです。実際に展覧会が開催された年もありました。当時はまだアートプロジェクトの経済効果を示す指標がなく、アーティストを支援する地域の発展をもって地域振興として実験的に継続されてきました。
その一方で、もう一つの事業の柱として「地域に関わるプログラム」を催すことも、時代の流れでより重点を置くようになっていきます。市民が関わることにより、アーティストがやろうとしている計画や予想していたことや既知認識に変化を与え、市民もサポートしながら自発性・積極性を発揮する、という相乗効果が生まれる状況を見ることができるようになりました。しかし一昔前はアーティストに市民向け、児童向けのワークショップを強いる時代もあったり、地域のためにアーティストが何かしら活動を行うこともミッションになっていた、という行政の意向がありました。振り返れば、今では参加型と認知される「ワークショップ」「オープンスタジオ」という言葉もまだ世に溢れてはいない時代だったことがうかがえます。
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現在でも多くの場所で話される、事業評価・効果に対して、アーカスの評価は「地域住民の心理的なメリット」や、「ものづくり産業とのクリエイティブな効果を狙った意識的なメリット」、「アーティストがお互いに刺激を受け合える環境であるメリット」、などの視点をもって評価を再認識されるべき、との指摘がありました。

「アートによって元気になった人が増える、ということが健康であることを意味するならば、医療費削減という意味での経済効果として数値化するのも、一つの評価になるのではないか(綿江氏)」という意見もありました。確かにそうかもしれません。

会田市長からは「20年前の当時の子ども達が『これってアートなの?』と反応していた頃から比べれば、今では『これもアートだよね』という反応に変わった。すんなりとアーティストと交流し、アートに触れることに躊躇しなくなった。これも影響となっているのでは。」というお話も出てきました。
子ども達に「現代アートというもの」を体験する機会をもたらすことによって、(具体的にはよくわからないのだけども)子ども達の意識がこの20年で柔軟に変化してきたようです。先だって行われたアーティスト・イン・スクールのお披露目会の様子を例に挙げ、子ども達が本当に生き生きと、自発的にアーティストと一緒に考えながら作り上げ、パフォーマンスを行い、アートプログラムに参加することに意欲的な姿に感銘を受けたそうです。

「『アートは地域の為に何が出来るのか?』という問いは、裏返しに『地域はアートの為に何が出来るのか?』という問いにも逆の考え方にもなりうる。地域がアートのため、アーティストの為に何ができるか、は同等なテーマとして取り上げるべき。最終的にはアーティストが成長して良い作品を作ることが地域還元につながる。」とは南條氏。

また、2000年度に招聘された眞島竜男さんが昨年、Re:AIR展に参加した際に再び守谷を訪れ、当時と同じように天ぷら公開制作を開催した経緯から、
「当時はやれることをやっただけで滞在が終わってしまったものが、再び守谷に戻ってきたことでやり残したことができた気がする。再び戻ってみて初めて、長い目で地域とアーティストの関係を続けていくことが大事と感じた。」
「地域に要求されることもあったが、自身も地域に要求しているアーティストだと思う。”アートをわからない”という地域の人からも反応・リアクションが欲しい」、という意見が。そういう意味でも、地域がアーティストの為にできることも考えるべきテーマです。そして「作家や地域の為にも、20年の歩みをまとめてもらい、資産として活用して欲しい」という要求をいただきました。

日比野氏は「”人と人とのつながり”が基本であって、相手を思いやる気持ちがあれば、どんな場所でもプロジェクトは展開できる。現代アートの意味合いを考えたとき、20年前と今では捉え方が違って、ただ共通するのはモノ(作品)よりも人(作家)がいることで何かが起きる、ということ。」
アートが世の中に浸透することによって、社会や人が抱える問題点を違う視点で捉えることができる。」と、地域で活用できるアートプロジェクトの価値や可能性を話していました。

綿江氏より、「新興住宅地で住み良さランキングにも常に上位にいる守谷市だからこそ、若者が多い分だけ人と人のつながりが希薄なのではないか、人と人をつなげる為にアートがある。守谷にはもっとそれが必要なのではないか?」という問いに対して、
「守谷には廃屋を片付け、音楽やアートのイベントをする若者達がいる。それもアーカスの御陰か、アーカスのせい?と感じている。細々でもよいからこれからもアーカスプロジェクトが続いていって欲しい」と会田市長。

さらにそれに対し、南條氏は「アーカスプロジェクトの場合、事業は継続しているが規模が縮小している。文化は小さくなるのではなく、大きく地域で育てていくべき。細々ではなく、拡大・発展させてください」と締めくくり、シンポジウムは閉会しました。

長時間に渡るシンポジウムでしたが、まだお伝えしたい内容は山ほどあります。
これでもだいぶはしょったつもりですが、長文になりました。ご容赦ください。
これがきっかけとなり、さらに地元地域から近隣の地域へと考える機会を共有し、生かしていければと思います。
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シンポジウム閉会後のスタジオ406の展示会場も、たくさんの人でにぎわいました。
19年分を一同にお見せする貴重な機会だったと思います。
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今年のアーティスト・イン・レジデンスプログラムもいよいよ9月から始まります。
これからもアーカスプロジェクトをよろしくお願いします。
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by arcus4moriya | 2013-07-07 12:17 | 地域とアート | Comments(0)
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