選考の総括
 東日本大震災等の影響もあり、応募者数が減ってしまった昨年度に比べ、今年度は337名もの数多くのアーティストからの応募がありました。世界の様々な地域で活動し、テーマや表現方法も幅広いアーティストの中からレジデント3名を選出するには、長い議論と、度重なる慎重な選択の過程を経なければならなりませんでした。

 審査では、まず、私とアーカススタッフによる一次審査が行われ、候補者8名が選ばれました。次いで行われた二次審査では、香港、ブラジル、スウェーデンを拠点に国際的に活動するキュレーター、トビアス・バージャー氏、ウンジー・ジュー氏、リサ・ローゼンダール氏に、個別に各候補者を評価していただきました。当然のことながら、審査員の評価の間には、意見の一致と共に、数多くの差異もありました。それぞれの活動の軸となる問題意識や興味が、アーティストへの眼差しに反映されるというのは、「質」を決める一つの価値基準など存在しないアートにおいては不可避であると言えます。したがって、先に書いた「選択」とは、アーカスプロジェクトが、アーティストの活動の何を重要視し、評価するべきかという「選択」でもあり、それには、アーカスの、守谷という地域との重要な関係性も考慮されました。相当の議論を踏まえ、候補者を選ぶにあたってのポイントは大きくは3つあったと言えます。1つ目に、守谷で行う作品制作案が、これからが期待できる新進の作家の、重要な一歩となりうるようなものであるか。2つ目に、それが守谷での批評性あるリサーチや、コミュニティーとの対話を深化できるようなコンセプトを含むかどうか。そして3つ目には、およそ20年の歴史を持ち、数多くのアーティストが制作を行なってきたアーカスプロジェクトにおいて、作品案が新鮮で、意義あるものであるかどうか。
 
 全体で行った最終審査での議論を経て選ばれたのは、オズギュル・デミルジ、バスィール・マフムード、ユ・ウンジュの3名です。彼らの表現方法は様々ですが、共通して、リサーチや対話を作品コンセプトのベースとしながら、現代社会の様々な文脈に切り込み、そこに生きる私たちに新しい気づきをもたらします。

 3ヶ月という短い期間で、初めて住む土地に自らの身体や感覚を慣らし、アイディアを模索し、作品を練り上げるのはそう容易なことではないはずです。日々交わされる何気ない会話や、偶然がもたらす出会い、あるいは真っ向からの真剣な議論や交渉が、彼らのインスピレーションとなり、対話を行う人々すべてにとっての糧となることと期待しています。

テキスト:チェ・キョンファ(アーカスプロジェクト ゲストキュレーター2012)
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by arcus4moriya | 2012-08-29 00:00 | AIR | Comments(0)
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